- 種田山頭火 「草の実の」
いつ咲いた草の実の赤く
枯れるものは枯れてゆく草の実の赤く
草の実の露の、おちつかうとする
こゝで寝るとする草の実のこぼれる
法衣(ころも)の草の実の払ひきれない
しつとり濡れて草の実のみどり
日ざしあたゝかな草の実の赤い
- 種田山頭火 「……風」4
うららかにして風
このさびしさは山のどこから枯れた風
つきあたつてまがれば風
花菜ほのぼの香を吐いて白みそめし風
ふつと影がかすめていつた風
ぼんやりしてそこらから秋めいた風
- 種田山頭火 「……草の実」1
あるけば草の実すわれば草の実
うらもおもても秋かげの木の実草の実
枯れてゆききができるやうになつた草の実
こゝに生えこゝに枯れたる草の実
法衣(ころも)こんなにやぶれて草の実
こんなに草の実どこの草の実
ほつと入日のさすところ草の実
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