- 種田山頭火 「水が流れる」
梅と椿とさうして水が流れてゐる
落ちてきて米つく音の水がながれる
しづけさは死ぬるばかりの水が流れて
山から水が流れてきて春の音
山から水が春の音たてて流れだしてきた
夜をこめて水が流れる秋の宿
- 種田山頭火 「流れてゐる」 「流れて来る」
梅と椿とさうして水が流れてゐる
ひとすぢに水ながれてゐる
別れてきて水が流れてゐる
すこし濁つて春の水ながれてくる
水のあかるくながれてくれば河鹿なく
夕べの水草が流れてくるよ
- 種田山頭火 「流れて来た」 「流れてゆく」
樹影雲影猫の死骸が流れてきた
山から水が流れてきて春の音
ゆふべすずしく流れてきた絵が桃太郎
蝉もわたしも時がながれてゆく風
- 種田山頭火 「おもむろ」
朝の水のおもむろに筏ながれくる
おもむろに雑魚など焼いてまだ寒いゆふべは
机上一りんおもむろにひらく
クレーンおもむろに春がきてゐる空
ゆふべおもむろに蠅は殺された
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