- 種田山頭火 「知らない」
種田山頭火「知らない」 風ふく草の、鳴きつのる虫の、名は知らない しぐれて山をまた山を知らない山 たれも知らない悩みがたえない秋に入る どこまでも咲いてゐる花の名は知らない 何といふ草か知らないつゝましう咲いて 寝ころぶや知らない土地のゆふべの草 春の夜の明日は知らない
- 種田山頭火 「いつまでも咲き」 「いつまでも鳴り」
落ちては落ちては藪椿いつまでも咲く 住みなれて藪椿いつまでも咲き 寝てゐるほかない茶の花のいつまでも咲いて 秋の夜の鐘のいつまでも鳴る 空腹、けふのサイレンのいつまでも鳴り
- 種田山頭火 「病みて」
病みて旅人いつもニンニクたべてゐる 病みて寝てまことに信濃は山ばかり 病みて一人の朝がゆふべとなりゆく青葉
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